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第13回 〜 人とモノ
栃木県 まみうだ工芸 大豆生田 洋

脳神経細胞は、その人自身の力により、物理的に作られて、その人の思考回路を決め ている、とは前回のコラムでお話させていただいたことなのだが、人の感情や考え方 という、「心」の領域まで神経細胞という、目に見える物質によって創造されている とするならば、物質のもつエネルギーの凄さ、素晴らしさを感じずにはいられない。

この世に中に存在する全てのものは元を辿れば同じ元素を組み合わせて作られている。 我々の身体を作っている物質というのも、実はその辺に転がっているものと同じ物質 から作られているのだ。

生命体も物質の組み合わせに過ぎないのであるが、生命体は、生活する環境に合わせ て自分自身を適応させ、より自分の遺伝子を広範囲に広げ、その勢力を拡大しようと いう本能を持っている。そしてより優れた生命体として生き残るために自分の身体を 作品のごとく作り上げ、磨き上げてゆく。地球上のすべての生命体はこうして様々な カタチに進化してきたわけだが、長い歴史の中で意思を持って作られてきた偉大な作 品と言えるかもしれない。

「モノを作る」という行為は、この生命が進化することに似ているような気がする。 製品や作品はすべて何らかの目的を持って作られ、その目的にできる限り適うべく 考えられて製作される。人類史上、様々なモノが作られてきたが、先祖の作品を後世 の者が学び、改良し、その作品の良さをさらに伸ばし、発展すべく制作に携わる。 そうしてモノは進化し、洗練され、よりよいモノとして人々の生活に貢献するように なってきたのだ。

様々な「モノ」に囲まれて生活している私たちは、こうした「モノ」の発するエネル ギーに少なからず影響されていると思う。モノの向こう側には必ず作者の心が存在し ているからだ。それは「どんな人と付き合い、生活していくか」というのと同じこと。 どんな「モノ」を身の回りに置いて、食べて、触れて、生活するかということによっ て、その人の活力としてエネルギーを発するに違いない、そしてその逆もあるのでは ないか、そう考える。

モノを作ることは、単なる物質として存在していた物の中に作者の心、魂を入れるこ とだ。製品や作品として世の中に出て、人の目に触れ、使われるモノは、使う人に活 力を、そしてエネルギーを与えるものでなくてはならない。 人の役に立つため、人の幸せのため、発展のために作者は自分の生命を注ぐべきであ り、それがクリエイティブワークに携わる人間の使命だ。

人とモノとの関係は、実は「人と人との関係そのもの」なのである。

まみうだ工芸 大豆生田 洋
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