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全国の看板屋さんに毎週交代でコラムを書いてもらいます。

第32回 〜作りたいもの
秋田県 有限会社 和田かんばん 和田陽一さん


亡くなったジョージハリソンが弾いていたんだろうか、あの”マイスートロード”のアコースティックギター。耳に残るボトルネック奏法のイントロが何とも言えず好きだった。ジャリジャリと小気味良いアコースティックギターのコードストローク。
深く力強い響きはズンズンと体を押してくるみたい。 何て美しい曲なんだろう。

発売当時私は15歳の中学生。ビートルズにもジョージにも詳しくはない、未だ幼い感性にも、甘美で柔らかな旋律は心にしみた。彼の死を惜しんで連日のようにラジオから流れてくるこの曲を何度もあらためて聞いているが、いくら繰り返し聞いても新鮮だ。

耳に懐かしい反面、新しくさえ感じるのはきっと私だけではないはずだ。三十年も経つというのに色褪せる事を知らない彼の音楽。たぶんそれは彼の人間性に理由があるんじゃないかなと思う。温和で誠実、愛に満ちたジョージ。音楽って、そんな”人”自身が表現される不思議な世界なのかも知れない。
どんなに見てくれを綺麗に繕っても「カッコだけ」のモノには人の心を動かす力など備わるわけも無い。どんなにちっぽけなものでも、そこに”心”があるからこそ多くの人を惹きつけるのではないだろうか?
自分が選んだ仕事にそんな夢のようなチャンスさえ予感できる話を重ね合わせてみたいものだと密かに思い続けている。「田舎のちっぽけな看板屋でも胸を張っていいものを作ろう。そして生き残って行こう!」私はこうしてただ書いているだけでも、ワクワクして子供みたいに言い様無くうれしい。そこには厳しい現実に背を向けることなく前を向いて歩いていけるという喜びがある。それはもしかして、自分にも何かを極められるかも知れないという大きな希望がはっきりと目の前にレリーフされているからです。

”こころのブランド”が今、一番大切なんだと語った人がいる。
さあ、私の仕事場から生まれるサイン達はどうだろう?
果たしてお客様が「ああ、頼んでよかった。」と言ってくださる看板やプランになったのか。どんな看板だって同じだ。小さなアクリルプレート・大型のロードサイン・ロゴマークやキャラクターづくりまで、自分にお客様を思う”心”があったかどうかをテストしてみる。モットーは「みんながうれしくなる看板づくり」。形になる商品も勿論だがプロセスにも自社マインドが生きているかを試さなくては”自分ブランド”のステッカーを貼る事はできない。「どこでも見かけるような看板、誰が作っても同じ様に出来る看板じゃないか?」・・・それは少し違うと思う。
設備の規模でも会社の大きさでもないぞ、自分がどんな仕事のやり方をしたら合格なのかを自分に聞いてみるんだ。上手い下手の前に「思い」が有るかどうかをテストする。
商品が図面の寸法通り正確に作られても、美しくプリントされて、カッティングされきちんと納期に間に合ったとしても、お客様に仕上がりを喜ばれたとしても、それが果たして”自分ブランド”なのかをもう一度、問いただして見なければいけないと思う。

商売は始めてから二十年と少し。たまに疲れの残る日も無いわけじゃ無いのだけれどやっと成人したての未熟者だ。まだまだこれから先があると思えば元気もわいてくるというものか。
できるだけ自由にきままに、もっともっと多くの人と交わりながら自身を確かめていこう。これから自分で作り出されるはずの「色とりどりの音楽達」が、どこかしっとり輝いてくれるように心を磨いていこう。

私もいつかきっとジョージのような旋律やリズムを生み出すんだと、夢見ている。